Higuma no Kedama

拝啓、バカボンのパパ

今年は例年にない寒さとのことですが、風邪など召されずにお過ごしでしょうか。

突然のお手紙、大変失礼かとは思いますが、読んで頂けると幸いです。



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僕が幼少のころから、あなたの事をよく拝見しておりました。

ブラウン管の向こうで　" これでいいのだ "　

そう言って、あなたはいつも奇天烈で破天荒な行動をされてましたね。

ただ、幼少の頃ゆえ、ほとんど覚えていません。




でも、ひとつだけとても覚えていることがあります。

それは " 西から登ったお日様が東へ沈む " です。

お恥ずかしい話ではございますが、" この歌の反対 "　　そう覚えているのです。




僕は今40歳になります。　

趣味で写真を撮るのですが、40歳になった今でも、

この歌を口ずさみながら、朝日や夕陽の位置を探すのです。




ともかく、真剣にあなたの事を想い考えるのは今日が初めてのことです。

その上、手紙などを書くという行為を全くしたことのない僕。



不慣れで不躾な手紙だとは思いますが、どうかご容赦ください。



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前述のとおり、僕はあなたの事をよく知りませんでした。

失礼かとは思いましたが、インターネットを使用し少し調べさせて頂きました。



あなたはもともと天才だったそうですね。

生まれてすぐに天上天下唯我独尊と口にし、家庭教師をつとめたり

自動車の修理を簡単にこなしたりしていたとか

御子息のハジメさんをも凌ぐ、天才児だったそうですね。



そんなあなたが、何故バカと呼ばれるようになったのか。



道を歩いている時にクシャミをし、その勢いで頭の歯車を口から吐き出してしまい、

「もう天才はやめるのだ」と言ってバカになったそうですね。



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最近、僕は思うのです。

僕も天才をやめようと。


いや、僕は天才ではないので、

天才ぶる、いや、出来る人ぶる、そういった事をやめたいと思っています。



学もなく、職も転々と、なにひとつ得る事もなく、漫然と40年生きてきました。

経験してきたたくさんの出来事を、真剣に向き合い会得しようとするのではなく、

こんな感じといった具合に、出来る人ぶり体裁を整えることだけを考えて生きてきたように思います。




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若い頃より転職を繰り返してきた僕

転職と言うか、世間一般の卒業～就職といった過程を進んで来なかったのです。



十四歳、僕は " Punk Rock" に夢中になりました。

まあ、よく言われる " 厨二病 "　ってやつ。　その典型ですね。



その影響もあり、バンドマンを志し、まともに就職というものをしなかったのです。

そういった事があり、アルバイトを転々とするそんな20代でした。



僕自身、転々とするつもりはなかったのですが、

アルバイトでも経験を積み仕事をこなしていくと、社員への誘いとなるのです。



しかし社員になってしまうとライブ活動に影響が及ぶ、そう考えて辞めてしまう。　



その繰り返しでした。



そして、20代後半、志半ばに挫折。




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30代、資格も職務経験もない僕。


縁あって就職できた小さな会社。

そこでがむしゃらに働きました。



でも、普通に頑張っても埋められない経験。

そう、好き勝手に生きてきた20代の代償です。

ひとの2倍3倍働きました。　でも、超えられない壁があったのです。



そこで身に付けたのが、前述の出来る人ぶる方法。



転職を繰り返してきたお陰で、色々な職を経験しました。

いつもゼロからのスタートだったのです。

でも、いろいろな仕事を経験すると共通項が沢山あることに気付きます。



そこで、その仕事の要点を掴み、ハリボテでも何でもとりあえずの結果を出してしまう。

結果が出てしまえばとりあえずの信用を得る事が出来る。

そして、自身のハリボテがバレるまでの時間的猶予を得て、その中身を埋める。



そんなインチキすれすれの方法ではあるが、それなりの結果を得ることも出来ました。



そして、現在何とか仕事をし生きているのであります。




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仕事というのは、他人の要望をその人になり変わって行うものだと思うのですが、

その時にその人の価値観が僕にはわからなかったのです。

そう、好き勝手に生きてきた自分は価値観が自分勝手だったのです。



そこで僕が頼りにしたのが正論や一般論 だったのです。





正論や一般論で固められたハリボテの結果





その弊害を最近感じる事となったのです。




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40歳、縁あってアウトドアに向かう



最初はキャンプを始めた。

整えられた自然の中、整えられた道具に囲まれ宴会をする。



フライフィッシングを始める。

大自然、動物達の世界へ足を踏み入れる。



冬、野営そして雪山へ入る。

整備、管理されたゲレンデではない。



そして、気付く、ハリボテの無力さ、無意味さに



大自然、正論も一般論も、もちろんハリボテも、全く通用しない世界。

通用しないというか、そんなもの存在しないし、存在できない。



今まで僕が頼りにしてきた物が全くの無意味だったのです。



スノーボードで頭を打ち過ぎたのがそれかどうかはわかりませんが、

おもいっきり脳天をハンマーで叩き割られたのです。




そう、粉々に木っ端微塵に



そして、頭の歯車もなくしてしまったようです。




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拝啓、バカボンのパパ



今、あなたを思い、あなたを目指し、また一からはじめます。

あなたの御子息が " ハジメ "　という名前であることも無関係ではないですよね。


僕も　" バカになります "




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拝啓、バカボンのパパ



何か困ったことや、自分の力だけではどうしようもないことがおきたら

誤魔化し、取り繕ってはだめですよね。


" これでいいのだ "


そう言って、受け止めますね。





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拝啓、バカボンのパパ



これからも道に迷ったら、口ずさみますね。

" 西から登ったお日様が東へ沈む "　って。





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この様な手紙はこれで最後にします。

だらだらと私事のみ語り、大変不躾な手紙となりましたこと、お詫び申し上げます。

ただ、この手紙の目的が、積もりに積もった自身の膿を出し、吐き出し、晒す事、

その様な目的である事をご理解頂けると幸いです。




まだまだ寒さ厳しいですが、くれぐれもご自愛ください。



敬具



2012.02.08 Kedama